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バンコク・エカマ地区、通称エカマイ通りの一角に、ひときわ目を引く店があります。
道沿いに面した店頭には、大人が両手を広げても届かないほどの巨大な鍋。牛肉や骨、香味野菜がぐつぐつと煮込まれ、立ちのぼる湯気が通りすがりの人の足を止めます。
「ワッタナー・パーニット（Wattana Panich）」は、50年以上にわたって地元で親しまれてきた老舗の食堂。タイのローカルグルメに関心がある人なら、一度はその名を耳にしたことがあるかもしれません。
今回は、この店の名物でもある“巨大鍋の牛肉煮込み”を実際に味わってきました。
創業50年以上、受け継がれる“牛スープ”の味
「ワッタナー・パーニット（Wattana Panich／วัฒนาพานิช）」は、バンコク・エカマイ通り（スクンビット・ソイ63）沿いにある、1960年代創業の老舗食堂です。店の歴史は60年以上におよび、現在も創業家族が代々その味を守り続けています。
この店の象徴ともいえるのが、店頭に構えられた巨大な鍋。
中では創業時から継ぎ足しながら使われてきたスープが、牛骨や香味野菜とともに絶えず煮込まれています。旨みが幾重にも重なったそのスープは、深いコクとまろやかさが特徴で、「50年スープ」の愛称で親しまれています。
地元の常連客はもちろん、観光客やグルメメディアからも注目され、ミシュランガイドのビブグルマンにも選出された実績を持つ、まさに“バンコクを代表するローカルの名店”といえる存在です。
名物の牛肉煮込みと豊富なメニュー
まずは看板メニュー「ガオラオ」から
「ガオラオ（Gao Lao / เกาเหลา）」とは、タイ風の肉入りスープ料理で、麺を入れずにご飯と一緒に食べるのが定番のスタイルです。見た目は地味ですが、素材の旨みをダイレクトに感じられる一品として、在住者の間でも根強い人気があります。
ワッタナー・パーニットのガオラオは、そんな数ある店の中でも“別格”の存在。スライス牛肉、煮込み肉、牛肉団子など、複数の部位が贅沢に盛られており、食感のコントラストを楽しみながら食べ進めることができます。
スープは薬草や牛骨の旨みがしっかり染み出た濃厚タイプですが、塩辛さは抑えめ。じわじわと舌に染み込むような深いコクがあり、個人的には「二日酔いの朝に食べたい一杯」でもあります。実際、在タイ日本人の間では「ガオラオと言えばここ」と言われるほどの定番中の定番。観光客がふらっと訪れるには少しローカル色が強いかもしれませんが、タイの“日常の贅沢”を味わえる料理として、ぜひ試してほしい一皿です。
ヤギ肉の薬膳スープ「ペトゥン」も人気
「ペトゥン（Pae Tun / แพะตุ๋น）」は、薬草とともに煮込まれたヤギ肉のスープ。
癖のある食材かと思いきや、柔らかく煮込まれていて食べやすく、スープにもほんのり薬膳の風味が漂います。少し変わったタイ料理を試してみたい人に向いています。
定番の豚足ごはん「カオカームー」もおすすめ
豚足を甘辛く煮込んだ「カオカームー（ข้าวขาหมู）」も試してみました。白ご飯とともに楽しむ定番料理で、トロトロの肉としっかり染みた味付けが印象的でした。
意外と多彩なその他のメニュー
この店では牛肉料理以外にも、「カオナーガイ（鶏肉と椎茸のあんかけご飯）」「パッウンセン（春雨炒め）」「スキヤキ・ポット（タイ式寄せ鍋）」など、多彩な料理が揃っています。グループで訪れてシェアするのもおすすめです。
価格と満足感のバランス
今回は3品注文して合計370バーツ。ローカル食堂としてはやや高めですが、味とボリューム、老舗という安心感を考えると納得の価格です。観光客向けレストランとは異なり、それぞれの料理の見た目に派手さはありませんが、しっかり作り込まれた料理が並び、確かな満足感が得られました。
アクセス・営業時間・注文のポイント
ワッタナー・パーニットはBTSエカマイ駅から徒歩約20分。日中は暑さもあり、タクシーあるいは、グラブなどの配車アプリ利用が現実的です。店名をタイ語（วัฒนาพานิช）で見せれば問題なく通じます。
営業時間は毎日10:00〜19:00で、休日の昼間は行列ができることも。メニューは英語併記ですが写真はないため、迷ったときは牛肉のガオラオとご飯の組み合わせを注文するのがおすすめです。
ローカルの名店で、深みのある一杯を
店頭の大鍋というインパクトに目を奪われがちですが、ワッタナー・パーニットの魅力は、丁寧に受け継がれてきたスープの味にあります。見た目の派手さではなく、静かに心に残る“本物の一杯”。観光地めぐりだけでは物足りないと感じている方にこそ訪れてほしい一軒です。次のバンコク旅行の候補に、ぜひ加えてみてください。
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