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タイ滞在中、定番の観光地を巡る現地ツアーに、一人で何度か参加したことがあります。
一人参加は、正直しんどい。周りは友人同士やグループばかり。移動のバンでは身内だけで会話が弾み、昼食のテーブルも自然と分かれていきます。
会話がまったくないわけではありません。それでも、一人で来た側はどこか居場所がない。ツアーの目的は交流ではなく観光地へ行くことなので、それでいいと言えばいいのですが。なにか物足りない。
今回参加したのは、チェンマイの日系ツアー会社「マニタビ」のカレン族の村ツアーです。筆者がマニタビに一人で参加するのは、これで3回目になります。
そして3回目にして、改めて気づいたことがありました。
マニタビのツアーは、一人で参加しても、なぜか妙に楽しいのです。定番ツアーで感じた、あの居場所のなさがありません。
なぜなのか。他のツアーと、何が違うのか。
3回のソロ参加を振り返ってみると、一つの答えにたどり着きました。
マニタビのツアーでは、なぜか参加者同士が仲良くなる
これなんです。マニタビのツアーに3回参加して、3回とも共通していたこと。それが「他の参加者と仲良くなった」ことでした。

筆者はかなりの人見知りです。心を開くまでは、他人との間につい壁を作ってしまうタイプ。それでもマニタビのツアーでは、参加者とLINEやSNSを交換しました。
たった一度きりの出会いだった人の顔も、名前も、何を話したかまで、今でもはっきり覚えています。定番ツアーでは、一度もなかったことです。
では、なぜこんなことが起こるのか。
定番ツアーで行くのは、ガイドブックやネットで散々紹介されている、誰もが一度は写真で見たことのあるような場所です。筆者自身も、参加前にはある程度の情報を知っていました。
だから現地に着いても、反応は答え合わせになりがちです。「写真で見るより綺麗ですね」「あ、これインスタで見たやつだ」。すでに答えを知っているから、会話はそこで閉じてしまいます。
マニタビのツアーは、ここが根本から違います。
行き先は、軽く検索したくらいでは出てこない場所ばかり。まさに秘境です。タイ在住歴の長い人でも「こんな場所、知らなかった」とこぼすほどの村へ、何があるのかわからないまま、参加者全員で一緒に踏み込んでいきます。

茅葺きに竹の壁、高床のつくり。日本ではまず見ることのない、カレン族の伝統的な住居だ。
すると、何が起きるか。
目にするものすべてに、誰も答えを持っていません。「これ、なんだろう」「たぶん、こう使うんじゃない?」。全員がその場で推測を出し合います。

高床の床下でくつろぐ黒豚。こんな何気ない光景にも、参加者は足を止めた。
定番ツアーの答え合わせが会話を閉じるのに対して、マニタビの答え探しは会話を開く。
「知らない」という一点を全員で共有しているから、初対面でも自然と言葉が交わされていくのです。
人見知りの筆者が、その何よりの証拠です。ツアーが終わったあとのバンの中で、「もう少しあの人たちと話したかったな」「このまま、みんなで飯でも行きたいな」と思うほど、いつの間にか心を開いていました。
では、参加者と仲良くなると、何がそんなに面白いのか。
同じ村を歩き、同じものに驚く。それでも、感じることは一人ひとり違います。「自分はこう見えた」「いや、自分はこう感じた」。その違いまで含めて面白いのです。

秘境の景色そのものは、写真でも見られます。でも、それを誰かと一緒に驚いた時間は、その場にいた人としか分かち合えません。
旅で記憶に残るのは、何を見たかより、誰とどう驚いたか。
マニタビのツアーが特別なのは、たぶんここです。
では、その「誰も答えを持っていない秘境」とは、具体的にどんな場所なのか。今回訪れた、カレン族の村での体験を書きます。
人は37の魂を持つ。カレン族の村で出会った、不思議な世界観
このツアーをナビゲートしてくれたのが、マニタビの坂田さんと、タイ人の日本語ガイドさん。そして村で筆者たちを迎えてくれたのが、カレン族のホスト、ヤティーさんです。
※坂田さんは同行される時とされない時があります。

坂田さん(左)と、ヤティーさん(右)
坂田さんが外から村に関わりつづけてきた橋渡し役なら、ヤティーさんは村の内側から暮らしを見せてくれる存在。この二人の立ち位置が、村での時間をより深いものにしてくれました。
今回の参加者は、筆者を含めて5名。チェンマイ在住の20代のご夫婦、坂田さんのご友人、そしてチェンマイ旅行中の方です。
(ツアーの詳しい内容と一日の流れは、マニタビのカレン族ツアー紹介ページで確認できます。)
この日は、少し特別でした。
カレン族が年に2回だけ行う儀式と、ツアーの日が偶然重なったのです。市内で働く村の人たちも帰ってきて、村全体がどこか浮き立っていました。

儀式の根っこにあるのは、カレン族独自の精霊信仰です。そしてこれが、遠い異国の話では終わりませんでした。
まず驚いたのが、白い糸を手首に結ぶ儀式です。年長者が、筆者たち参加者の手首にも一本ずつ結んでくれました。


なぜ、糸を結ぶのか。
理由が、実に面白いのです。
カレン族は、人は生まれながらに37の魂を持つと考えるそうです。そのうち体に宿るのは、頭や心臓、両手、脚など、たったの5つ。残る32は、鹿や猿、蛙やカニ、蝶やトンボといった、森に生きる動物たちの中に宿っている。
生きているあいだ、魂は少しずつ体から抜けていく。手首の白い糸は、その魂をつなぎとめるためのものだというのです。

人の魂の大半が、自分の体ではなく、森の生きものたちに預けられている。
そして口をついて出たのが、「これ、日本の八百万の神と似てませんか」という一言。すると参加者の一人から、「あー、確かに!」と声が返ってきました。
筆者には、自然のあらゆるものに魂を見いだす日本の感覚と、どこか重なって見えました。
驚きは、もう一つありました。
カレン族には、生まれた赤ん坊のへその緒を竹筒に納め、木の幹にくくりつける風習があります。その木は、子どもの魂が宿る木。子どもは、自分の木とともに育っていきます。だから村の人は、一人一本、自分の木を持っているのです。


この風習は、ヤティーさん自身も実践している。我が子のへその緒を、木に結んだという。
竹筒がくくりつけられた木を最初に見たとき、少し不気味に感じました。夜にひとりで出くわしたら、完全にホラーです。
ところが、その意味を知って、印象が一変しました。
これもまた、日本と地続きだったのです。
日本にも、へその緒を桐箱に納めて大切に取っておく習慣があります。「これ、日本のあれに似てるね」と話すと、また「確かに」と声が返ってきました。すると誰からともなく、「スピリチュアルだよね」と声が上がりました。
不気味だと思ったものが、意味を知った途端、自分たちのすぐそばにあるものへ変わる。
こうした一つひとつを、その場で解説してくれたのが坂田さんです。

ヤティーさんの言葉を通訳しながら、参加者から疑問が出れば、その場で答えてくれる。一つ分かると、また新しい疑問が湧いてきます。それをヤティーさんに聞き、坂田さんが橋渡しをする。すると参加者からも、「じゃあ、あれは?」と次の疑問が飛び出します。

疑問が生まれ、解け、また生まれる。
その循環が、村にいるあいだ止まりませんでした。
遠い秘境の村へ来たはずでした。それなのに、そこで出会ったのは、どこか自分たちと似た世界の見方でした。

知らない場所に踏み込んで、知っている何かに出会う。
そのたびに誰かが驚き、誰かが疑問を口にする。最初は知らない者同士だった参加者が、いつの間にか一緒になって答えを探していました。
そして、飯がとにかくうまい
マニタビのツアーには、もう一つ外せない魅力があります。
飯が、とにかくうまいのです。
この日、村で振る舞われたのは、カレン族の家庭料理でした。


里芋と燻製豚のスープ、干し高菜と地鶏のおかゆ、じゃがいもを潰したマッシュポテト、白ごまとエゴマをすり潰したふりかけ。どれも、筆者がこれまでタイで暮らすなかでは、ほとんど出会ったことのない料理です。
そして、どれも本当にうまい。
バンコクや街なかで食べるタイ料理は、正直に言えば脂っこい。うまいけれど、どこか体に重いと感じることがあります。
ところが、カレン族の料理にはその脂っこさがほとんどありません。素朴なのに味はしっかりしていて、空腹の胃にどんどん入っていきます。
印象的なのは、使われている食材です。野菜の多くは、カレン族の人たちが農薬を使わずに育てたもの。地鶏や豚も村で育てています。派手な味付けではなく、素材そのものを食べている感覚が強い。

正直、そのへんの街のレストランより、ずっとうまいと思いました。
そして、この食卓には、料理とは別の楽しさもあります。
食事は、みんなで卓を囲むスタイル。同じ鍋から取り分け、「これうまいね」と言い合う。
この日はさらに、儀式で飲まれる地酒まで振る舞われました。ラオ・カレンと呼ばれる、アルコール度数45度の強い酒です。杯が進むにつれ、場の空気もどんどんほぐれていきました。


気づけば、話は料理から離れていました。
仕事のこと、普段の暮らし、それぞれのタイとの関わり方。参加者の中には、マニタビの活動に協力している人もいれば、YouTubeの編集で生計を立てる20代の夫婦もいる。
タイ旅行という枠には収まらない人たちが、自然と集まっているのも面白いところです。
そんな話の流れで、筆者が「タイ一択というブログを運営している」と話したときのこと。
「あ、それ知ってます」
まさか、こんな山奥の村の食卓で、自分のブログを読んでいる人に出会うとは。
実は前回のツアーでも、同じことがありました。
村の暮らしに驚き、その暮らしから生まれた飯を食べる。強い酒を飲みながら、さっきまで知らなかった人たちと仕事や人生の話をする。
朝、チェンマイを出発したときには想像もしなかった時間が、そこにありました。
一人で申し込んでいい。帰る頃には、また会いたい人ができている

今回は日帰りのツアー。18時頃、筆者たちはカレン族の村をあとにしました。最後まで手を振って見送ってくれる、ヤティーさんの姿。
そして、帰りのバンでのこと。
日本人的な感覚なら、何も言わずとも行きと同じ席順で座るものです。ところが、行きは離れて座っていた参加者の一人が、帰りは筆者の隣に来ました。
筆者自身も、彼の活動に興味があり、もっと話したかった。職種は違えど、二人ともフリーランスとしてタイに暮らす身。共通の悩みや、タイで感じたこと、近ごろのインターネットの移り変わりまで、話はツアーの枠をとうに超えていきました。
行きの車内は、まだどこかぎこちなくて、村まで遠く感じたものです。
それが帰りは、気づけば全員が打ち解け、あっという間に市内に着いてしまった。秘境から現実へ一気に引き戻されるようで、どこか寂しさすら覚えました。
解散のとき、胸にあったのは「もっとみんなと話したいな。なんなら、このままご飯にでも行きたいな」という思い。
人見知りで、なかなか心を開けない筆者が、ここまで思ったのは初めてでした。
検索しても出てこない秘境の文化に触れられる。それだけでも、このツアーは十分に面白い。
でも、心にいちばん残ったのは、景色ではありませんでした。
ほぐれていく車内の空気。強い酒を酌み交わしながら、仕事や人生の話をした時間。景色なら写真に残せます。でも、この時間は、その場にいた人としか作れません。
旅で記憶に残るのは、何を見たかより、誰とどう驚いたか。
そして、その時間は、一人で来ても手に入ります。誰も答えを知らない秘境が、初対面の距離を勝手に縮めてくれるからです。人見知りの筆者ですら、こうなりました。
だから、マニタビのツアーは、一人でも参加していい。
一人で申し込んで、知らない村へ、知らない人たちと踏み込む。帰る頃にはきっと、また会いたい人ができています。
参加する前に。料金・予約・持ち物
最後に実務的な情報をまとめます。詳細や最新情報は、マニタビ公式サイトで確認してください。
ツアーの種類
>> 【少数民族ツアー】自然と共生するカレン族の暮らし体験|マニタビ公式サイト
日帰りと1泊2日から選べます。今回筆者が参加したのは日帰り。時間や内容は、日程や参加者の希望に応じて柔軟にアレンジしてもらえます。村はチェンマイ市内から車で約1時間半、ドイインタノン山へ向かう途中にあります。
料金
日帰りツアーは、費用を参加人数で頭割りする仕組みです。人数が多いほど、一人あたりは安くなります。
- 1名参加:6,900バーツ
- 2名参加:5,000バーツ/人
- 3名参加:4,500バーツ/人
- 4名以上:4,000バーツ/人
1泊2日は6,500バーツ/人(最低催行人数4名)。料金には、村での食事、アクティビティ、貸切バン代、ガソリン代、日本語タイ人ガイドの同行代が含まれます。カフェ代や市場での買い物、土産代は別です。リピーターは500バーツ引き、子ども割引もあります。料金は変わる場合があるので、必ず公式で確認を。
一人でも参加できる
最低催行人数は1名。一人でも申し込めます。筆者は3回とも一人で参加しましたが、予約から当日まで、一人だからと気兼ねする場面はありませんでした。
予約方法
マニタビ公式LINEが手軽です。筆者もLINEで予約しました。やりとりもスムーズで、ツアー後には撮った写真も共有してもらえます。
持ち物・服装
- 汚れてもいい動きやすい服(泥や染料で汚れることがあります)
- 長袖・長ズボン(朝晩は冷え、虫よけにもなります。川に入る場合もあるのでまくれるものを)
- 運動靴(村を歩きます)
- 日焼け止め、帽子、常備薬など
注意点
- 天候で内容が変わります。小雨は決行、大雨は室内プログラムに。
- 森が近く、虫やとかげがいます。
- 村は電波が入りにくい場所があります。デジタルデトックスと思って楽しみましょう。
儀式や食事について
本文で書いた儀式は、年に2回だけのもの。訪れる日に必ず出会えるわけではありません。食事の内容も、季節やその日の村の様子、ツアーによって変わります。何に出会えるかは、行ってみてのお楽しみです。
もっと楽しみたい、マニタビのツアー

- タイルー族が住む秘境の村へ。2泊3日ツアー体験記
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坂田さんが少数民族と関わり、マニタビを始めるまでを取材しました。このツアーが、なぜこんなにも特別なのか。その理由が見えてきます。 - 「マニタビ」がチェンマイ市内にショップをオープン。少数民族の衣食住と物語に出会える新拠点
マニタビの店舗で買える、チェンマイならではの土産を紹介しています。少数民族の手仕事を、日本へ持ち帰れます。




