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サクヤン(Sak Yant)とは、タイに伝わる伝統的なタトゥーです。仏教やアニミズム、ヒンドゥー教の思想を背景に、神聖な図形や文字を体に刻みます。
施術は、仏教僧やアチャーンと呼ばれるサクヤンマスターのみが行います。
マスターの祈祷(マントラ)とともに彫られることで、単なる装飾ではなく、護符としての意味を持つと考えられています。

サクヤンはその独特なデザインと神秘性から、近年は外国人の間でも人気です。一方で、見た目だけを模した「サクヤン風タトゥー」も多く、本来の意味を知らないまま入れるケースも少なくありません。
本記事では、バンコクで活動するサクヤンマスターへの取材をもとに、サクヤンの本来の意味や考え方、そして入れる前に知っておきたいポイントを整理します。

今回お話を伺ったアーチャーン・ネン。バンコクでサクヤンを彫るマスターの一人であり、国内外から多くの人が訪れる。
サクヤンで人生は変わるのか
サクヤンには、仏教、ヒンドゥー教、アニミズムの思想が重なっています。守護や開運といった力が宿ると考えられてきました。
そのため、多くの人がこう考えます。
サクヤンを入れたら、人生は変わるのか。
結論から言えば、変わるかどうかは人によります。ただ、2回、3回と新たなサクヤンを求めて訪れる人がいる以上、少なくとも彼らにとっては意味のある変化があったと考えるのが自然です。

一方で、重要な前提があります。サクヤンを入れたからといって、幸運が自動的にもたらされるわけではありません。
サクヤンの本質は、外から力を与えるものではない。痛みを受け入れ、それを体に刻み、記憶として残すことにあります。
人は痛みを感じると、アドレナリンやドーパミンが分泌されます。その体験を通して、自分の中で何かを決める状態に入る。

そして、サクヤンは残り続けます。ふとした瞬間に目に入り、そのときの覚悟や決意を思い出す。
サクヤンは願いを叶えるものではない。その覚悟や決意に向かうためのモチベーションを維持するものです。
「効果が出るかどうかは、その人のモチベーションによる」
だからこそ、何も変わらない人もいます。自己中心的な考えのままの人や、意味を持たせずファッションとして入れる人には、大きな影響は生まれにくい。
これは日本の刺青にも通じる話です。人は古くから、痛みという体験に意味を与え、覚悟や信念と結びつけてきました。
サクヤンは、その思想が強く表れている文化の一つです。
では、こうしたサクヤンは、実際にタイ社会の中でどのように受け止められているのでしょうか。
サクヤンはタイ社会でどう見られているのか
タイでも、サクヤンが全面的に受け入れられているわけではありません。
近年はSNSやインフルエンサーの影響もあり、若い世代を中心に一般的な存在になりつつあります。
実際に、起業家やスポーツ選手など、社会的に成功している人がサクヤンを入れているケースも増えています。

一方で、年配層の中には今でも懐疑的な見方をする人がいます。刺青に対して「怖い」と感じる感覚は、日本と同様に一定数残っています。
また、社会的な評価という点では、完全に自由とは言えません。
例えば、銀行やホテルなどのサービス業では、見える場所にサクヤンがあると不利になる場合があります。そのため、タイ人の中でも見えにくい場所に入れる人は少なくありません。
つまり、サクヤンは広く受け入れられつつある一方で、仕事や見た目に関しては、いまだに現実的な制約が残っています。
ただし、日常生活の中での印象は確実に変化しています。
特に若い世代にとっては、サクヤンは特別なものではなくなりつつあります。身近に入れている人がいれば、それが当たり前になる。
では、こうした変化の中で、サクヤンをファッションとして入れることは許されるのでしょうか。
サクヤンはファッションで入れていいのか?本物と偽物の違い

この問いに対して、マスターの考えは以前と変わっています。
かつては、明らかに信仰のない人には施術しないこともありました。しかし現在は、そのような線引きはしていないといいます。
「私たちのスタジオに来る時点で、ある程度サクヤンについて調べている方がほとんどです。見た目から入って、あとから本質を理解する人も多い」
興味深いのは、理解度に関する話です。マスターによれば、近年はタイ人よりも外国人の方が、サクヤンの意味や背景をよく調べたうえで訪れる傾向があるといいます。
一方で、観光地にはいわゆる“サクヤン風タトゥー”を入れるスタジオも存在します。
サクヤンマスターではない彫師が、デザインだけを模倣して施術するケースです。

観光地の”サクヤン風タトゥー”スタジオ
こうしたスタジオについてどう考えるのか。
「家族の生活のためなど事情があるなら否定はしません。ただ、お金儲けだけが目的であれば反対です。それはサクヤンを求めて来た人を騙すことになるし、文化を軽視している」
ここで一つ、はっきりしておくべきことがあります。
観光地で彫れる「サクヤン風タトゥー」は、見た目が似ていても中身は別物です。
サクヤンは、デザインだけで成立するものではありません。
仏教僧やアチャーンのもとで長年の修行を積み、初めてサクヤンマスターとして施術を担います。
修行の過程では、経典や瞑想といった仏教的な実践に加え、サクヤンに込められた意味や儀式を学びます。技術だけでなく、敬意と理解をもって施すための精神的な基盤が求められるのです。
つまり、誰が、どのような意図で、どのように施すか。そこまで含めて初めて意味を持ちます。
だからこそ、理解している人ほどサクヤンマスターのもとを訪れます。

サクヤンは消してもいいのか
一方で、こうして体に刻まれる以上、「あとから消せるのか」という問題は避けて通れません。
日本では、あとから刺青を消したいと考える人も少なくありません。サクヤンも例外ではなく、環境や事情によっては消さざるを得ないケースもあるでしょう。
では、宗教的な側面を持つサクヤンは、消しても問題ないのか。
この問いに対して、マスターはこう答えます。
「問題ありません。あなた自身がもうサクヤンに対しての思い入れや信仰がないのであれば、それはもう意味をなさないので。消したからといって罰当たりだとか、そういう考えはありません」
一方で、現実的な制約もあります。
サクヤンは伝統的な手彫りで施されるため、機械で入れたタトゥーに比べて除去が難しい。完全に消すことは可能でも、簡単ではありません。
そのため、マスターはこう続けます。
「こうした手彫りのタトゥーは物理的に消すのが難しいので、できればよく考えてから来てほしいです」
さらに、入れる前の判断についても言及します。
「必要であれば家族や友人に相談したほうがいい。その上で本当に必要であれば、いつでも相談してほしいです」
今回取材したバンコクのサクヤンスタジオ「Ajahn Neng Sak Yant Tattoo」

Ajahn Neng Sak Yant Tattooは、2002年に設立されたサクヤンスタジオです。
今回取材に応じてくれたアチャーン・ネンを中心に、息子や複数のサクヤンマスターが在籍しています。


部屋に安置されたルーシー(仙人)の像。古代インドの修行僧にルーツを持ち、護守の呪文を扱う存在とされている。
アチャーン・ネンは、20年近くサクヤンマスターとして活動し、これまでに約10万人へ施術を行ってきました。
もともと別の仕事に就いていたネンは、自身がサクヤンを受けた経験をきっかけに、その背景にある呪文や文化に興味を持ちます。
その後、タイ国内にとどまらずラオスなど周辺国にも足を運び、各地のサクヤンの思想や技術を学びました。
こうした修行期間は7年以上に及び、その中で技術とマントラを身につけ、サクヤンマスターとしての道を歩み始めたといいます。
また、このスタジオは海外からの知名度も高く、アーティストのエド・シーランに施術を行ったことでも知られています。
施術においては衛生管理も徹底されています。
サクヤンに使用するメタルロッドは毎回新しいものが用意されるなど、感染症対策にも配慮されています。
タイではスタジオによって衛生面に差があるのも事実ですが、ここは世界中から人が訪れる場所として、その点も含めて信頼できる環境が整えられています。

Ajahn Neng Sak Yant Tattooの基本情報
- 電話番号:+66 85 075 9061
- 公式Webサイト:www.thaisakyant.com
- SNS:Instagram / Facebook / LINE
施術の流れと予約方法
- 予約方法
公式サイトのLINEから問い合わせ - 言語
英語またはタイ語のみ
※日本語通訳は事前相談が必要 - 予約確定
事前デポジットの支払いが必要 - デザインの決め方
アチャーンとのカウンセリングを実施
(目的・悩み・背景を共有したうえで提案を受ける)
※希望があればデザイン指定も可能 - 料金
サイズやデザインによって異なる
目安:3,000〜5,000バーツ(要事前確認) - 所要時間
約1時間前後(デザインによる) - 注意点
最新情報や詳細条件は必ず公式サイトで確認
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