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タイの寺院で実践されている「ヴィパッサナー瞑想」は、無常・苦・無我を洞察し、自己の内面と静かに向き合うための修行法です。
上座部仏教の本場であるタイでは、本格的な修行型の瞑想プログラムが各地の寺で行われています。
今回筆者が訪れたのは、アユタヤにある「ワットマヘーヨン(Wat Maheyong / วัดมเหยงคณ์)」。
外国人の参加も受け入れてはいるものの、内容は完全にタイ人向けであり、説明から会話まですべてがタイ語というローカル仕様。外国人観光客向けの瞑想ツアーとはまったく異なる、本物の修行環境です。
しかし、筆者のタイ語力での参加は正直厳しいため、今回は、日頃からタイ現地情報の共有でお世話になっている「タイ語のメモ帳さん」と共に参加。通訳などサポートしてもらい、2泊3日の修行を無事に終えることができました。
この瞑想修行は、これまでタイで体験したあらゆるアクティビティの中でも、もっとも心が洗われた時間だったと言っても過言ではありません。修行の3日間を通じて、タイという国の文化の本質に触れることができたようにも感じられました。
「タイ語のみ」というハードルはありますが、本場のヴィパッサナー瞑想に関心がある方には、ぜひ一度体験してみてほしいと心から思います。
お寺やタイ文化、そしてタイ人に対する見方さえも変わる、そんなかけがえのない体験になります。
アユタヤの本格瞑想寺「ワットマヘーヨン」とは?観光地でもある修行の場
ワットマヘーヨン(Wat Maheyong / วัดมเหยงคณ์)は、アユタヤ旧市街の西側に位置する仏教遺跡で、1438年に建立されたアユタヤ時代の古刹です。
観光地として整備・修復されており、他の定番遺跡に比べると知名度はないものの、マイナー遺跡の中では見応えがある場所として一部の旅行者には知られています。
観光客にとっては歴史的建造物として、そしてタイ人にとっては瞑想修行の場として知られているのが特徴です。

古い遺跡でありながらも、綺麗に修復されています
一般的には、上地図画像の遺跡エリアだけが知られていますが、実際の敷地は想像以上に広大です。瞑想施設、修行者の宿泊棟、読経ホール、洞窟瞑想所などが点在し、寺全体が修行のために設計された空間であることがわかります。

境内には多くの修行者がいます
ワットマヘーヨンは、アユタヤのみならずバンコクを含むタイ中部においても、有名なヴィパッサナー瞑想センターの一つです。
実際にここでの修行を希望するタイ人は多く、タイ人のブログやSNSなどでも体験談が数多く共有されています。観光スポットでありながら、本格的な精神修行の場としても根強い人気を誇る寺院なのです。
瞑想修行の参加方法|申し込み・費用・持ち物
ワットマヘーヨンの瞑想修行は、基本的に無料で参加可能です。
ですが筆者たちは修行を終えた後、それぞれ1000バーツずつを寄付としてお寺に納めました。食事などの提供もあるため、気持ち程度でも寄付をしておくのが望ましいでしょう。
参加申し込みは、以下のワットマヘーヨン公式ウェブサイト(英語表記あり)から行います。当日訪問での飛び入り参加は不可で、事前の登録・予約が必須です。
まずは「Sign Up」からアカウントを作成します。登録には以下の情報が必要です
- 顔写真
- パスポート番号
- 電話番号・LINEアカウント
- 住所(旅行者はホテル住所でも可)
生年月日は仏暦での入力が必要です。
たとえば、1990年(平成2年)生まれの場合、仏暦では「2533年」となります。
アカウント作成後、「Dhamma Practice Course」から希望するコースと日程を選択します。
コースは以下のような種類があります。
- 2〜4日間の短期コース(一般向け)
- 9日間の本格コース
- 高齢者向けコースなど
筆者たちが体験したのは2泊3日の3日間コースです。初めての方にはこのコースがもっともおすすめです。
1泊2日では物足りず、4日間は初心者にはやや負荷が高いため、3日間が“ちょうどいい修行強度”と感じました。
コースは金曜〜日曜に固定されているため、予定も立てやすくなっています。
日程(Period)を選択し、利用規約に同意すれば申込完了です。
申し込みが正常に完了していれば、「Member Information」内の「Course History」に予約内容が反映されます。日程や氏名に間違いがないかを確認しておきましょう。
持ち物と準備のポイント
公式サイトでは以下の持ち物が記載されています。
- 毛布・タオル・就寝用の着替え
- 石鹸、シャンプー、歯ブラシ、歯磨き粉などの洗面用品
- 常備薬
- パスポート(またはタイの運転免許証)
毛布は暑季なら不要です。宿舎にはエアコンはなく、天井ファンのみなので暑いです。筆者はバスタオルを代用して十分でした。
ただ、冬はかなり寒いことが想定されるので、寒季はブランケットを持参すべきでしょう。
枕は常備されていますが、かなり臭いが気になったため、ハンドタオル数枚を重ねて代用しました。
敷布団はマット+ゴザのみで、かなり硬めなので、腰痛持ちの方は注意が必要です。
日中はお寺から支給される修行着を着用します。就寝用の軽装だけあれば問題ありません。
ハンガーは宿舎に常備されています。
その他、細かい日用品は忘れても心配ありません。境内には売店(コンビニレベルの品揃え)があり、洗面用品、ティッシュ、Tシャツ類まで購入可能です。
貴重品の管理について
宿舎には鍵付きロッカーはなく、貴重品は自己管理が基本です。
筆者たちは、売店で購入したトートバッグに貴重品を入れて常に持ち歩いていました。
また、読経集やスケジュール表なども常時携帯するため、肩掛け可能なバッグやリュックの持参がおすすめです。
静寂と向き合う3日間|ヴィパッサナー瞑想修行開始
いよいよ本格的な修行が始まります。1日のスケジュールや基本的な流れについては公式ウェブサイトに詳しく掲載されています。
かなり細かくスケジュールが組まれていますが、基本的には1日の大半が瞑想と読経、そして仏教の教えに関する講話に充てられ、朝から晩まで静寂と自分自身と向き合う時間が続きます。
お寺の方々のあたたかな雰囲気
修行を通じて終始感じたのは、ワットマヘーヨンのタイ人スタッフや修行者たちのあたたかさ。タイ語が不十分な外国人であっても、真剣に参加しようとする姿勢があれば、誰もが快く迎えてくれます。
実際、これまでにも外国人の参加者は一定数いたようで、筆者たちも最初に英語版で用意されている瞑想ガイド動画を見せてもらいました。
内容自体は日本語で事前に調べられる瞑想方法と共通している部分が多いため、語学力に不安があっても予習さえしておけば問題なく参加できるはずです。
印象的だったのは、歩行瞑想の動作。ゆっくりと重心の移り変わりに意識を向けて歩く姿は、まるでスコータイ時代の仏陀遊行像のようでした。

歩行瞑想中の修行者

スコータイの仏陀遊行像
厳しさよりも「できる範囲で」の姿勢
修行に入ると、スマートフォンの電源は切り、鍵付きのバッグにしまって一切使用不可になります。そして八戒を守る日々が始まりますが、過剰にストイックな雰囲気はなく、「できる範囲で誠実に取り組む」ことが大切にされている印象でした。
実際、宿舎でスマホをこっそり使っているタイ人修行者もいましたし、瞑想中の沈黙ルール(ノーブル・サイレンス)も完璧ではなく、多少の会話は許容されている雰囲気です。
筆者自身も「今の説法、何て言ってましたか?」とタイ語のメモ帳さんに聞いたり、修行の合間に「終わったらアユタヤで1泊遊んでバンコクに帰りません?」なんて煩悩的な雑談をしてしまったことも。
それでも全体としては皆が真面目に取り組んでおり、戒律を破ったからといって咎められることもなく、リラックスしながらも内省的な時間を過ごせました。
【体験談】個人的にもっとも辛かったのは読経の時間
筆者にとって最も苦しかったのは、朝晩1時間ずつ行われる読経の時間でした。内容はタイ語表記されたパーリ語の経典。正直、全く内容を追えず、周囲に合わせて声を出すことすらできませんでした。
もともと日本でも読経に集中できないタイプだったこともあり、何もできずただ座って時間が過ぎるのを待つこの時間は、瞑想以上に精神的にきつかったです。
精進料理とは思えないクオリティの高い食事
一方で、食事は驚くほど美味しく、筆者にとって大きな楽しみでもありました。
朝食はお粥、昼食は6〜7種類のおかずから好きなものをプレートに盛るスタイル。辛すぎる料理は少なく、トムチューのような優しい味付けの料理も多く、日本人でも抵抗なく食べられる内容です。しかも日替わり。

食事会場

ボトルウォーターは何本でも無料

時にはデザートにフルーツや少々のお菓子も提供されます
さらに、飲み物も水だけでなく、ミロやコーヒー、バタフライピーティーなどが提供されるなど、意外と選択肢が豊富。無料でこのレベルの食事が出るとは思えないほどのクオリティでした。
宿舎環境は「清潔だけど快適とは言い難い」

宿舎棟。男女で棟は別々になっています
宿泊施設は、広いホールにそれぞれがゴザを敷いて寝る雑魚寝スタイル。エアコンはなく、天井のファンのみ。筆者たちはファンの真下を確保できたため多少快適でしたが、4月などの猛暑期はかなり過酷であることが想像できます。
修行者の人数も多いため、早朝から物音がしたり、就寝中に誰かが間違えて電気をつけてしまうなど、静かとは言い難い時もありました。神経質な方は、耳栓やアイマスクを持参すると安心です。
シャワーは水のみ。暑い時期であればさっぱりして気持ち良いですが、寒い時期だと結構辛いでしょう。
心が整う環境と瞑想体験
ワットマヘーヨンの修行では、境内のさまざまな場所で瞑想を行います。
自然林に囲まれた屋外スペース、人工の洞窟エリア、ムチャリンダ池(蛇神に守られる仏陀の姿)を模した空間、さらには歴史的な遺跡の中など。そのどれもが神秘的で、静寂の中で瞑想をすると、なぜか心がすっと晴れていくのを感じました。
正直に言えば、目を閉じていると眠気で頭がカックンと動くこともありましたし、思考が雑念まみれになってしまう時間もありました。でも、それは当然のこと。ほぼ1日中、瞑想に向き合っているのです。
「マインドフルネス」「瞑想は心に効く」といった言葉をよく耳にしますが、個人的には「1日2日かじった程度で効いたら誰も苦労しないよな」とも思います。
それでも、この期間中、筆者も同行したタイ語のメモ帳さんも、なぜかずっと穏やかな気分でいられたのは確かです。自分でも気づかぬうちに、感情の波が穏やかになっていたり、人へのイライラが皆無だったり。
それが瞑想の効果なのか、非日常の環境が与える一時的な高揚感なのかはわかりません。ただ、普段の生活ではなかなか得られない「気持ちの軽さ」がそこにはありました。
ありがちな表現ですが、まさに「プラス思考」や「心のデトックス」といった感覚。
もちろん修行が終わると、数日でその効果は薄れていきましたが、それでも一度でもこの状態を知ることができたのは大きな収穫です。日々の生活の中で瞑想を取り入れていくきっかけとしては、これ以上にふさわしい体験はないでしょう。
高僧の説法に学ぶ|心に残る言葉と気づき
修行2日目の夕方には、上座部仏教の高僧による説法と質疑応答の時間がありました。参加者たちが抱える悩みや不安に対し、高僧が丁寧に答えていくこの時間は、筆者にとっても印象深いひとときでした。
例えば、ある修行者が尋ねました。
「過去に罪を犯したことがあります。でも、その後ずっと良い行いを重ねていれば、いずれ帳消しになるのでしょうか?」
高僧の答えは、例えを交えて静かに語られました。
「コップに塩を入れてみてください。これが“罪”です。そして“善行”は水です。水を注げば塩は薄まります。でも、完全に消えることはありません。だからこそ、私たちは“積み重ねること”を意識し続けなければならないのです。」
他にも、こんな問いが投げかけられていました。
「私は“死”が怖いのです。どうすればその恐怖と向き合えるのでしょうか?」
これに対し高僧はこう応じました。
「“死”が怖いのは当然です。しかし、私たちは“死”そのものをコントロールすることはできません。でも、“死ぬまでの時間”は、選ぶことができますよね。生きている今の一瞬一瞬をどう使うか。それを見つめ直すのが、修行の目的なのです。」
仏教的な死生観が根づいたこの国ならではの視点がそこにありました。タイでは輪廻転生の考えが一般的で、仏教の修行とは「この命をどう生きるか」を突き詰める行為なのだと改めて感じさせられました。
心が整った3日間、そしてこれから
3日間だけの体験でしたが、自分の思考や感情の“距離の取り方”を少し学べたような気がしています。派手な体験ではないけれど、確実に心に残る修行でした。
常に何かに追われているような毎日を送っている方にこそ、ぜひ一度参加してみてほしいと感じます。瞑想の技術云々ではなく、ただ静かに“自分の内側”と向き合う時間が、きっと何かを変えてくれるはずです。
ワットマヘーヨン(Wat Maheyong / วัดมเหยงคณ์)の基本情報
- 遺跡の開放時間:毎日8:00〜17:00
- 入場料:外国人80バーツ / タイ人10バーツ
- 駐車場:あり
- 公式ウェブサイト
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今回、一緒に瞑想修行をした「タイ語のメモ帳さん」は、YouTubeやSNSにて、初心者〜中級者向けに実用的なタイ語表現や学習法を紹介されています。タイ語に興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
- ウェブサイト:thailanguage-learning.com
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