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バンコク・トンローに開業した「Greeus® Medical Cannabis Clinic Bangkok」は、不眠症やストレス、慢性痛、がん治療に伴う不調など、幅広い症状に対して医師の診察を通じた医療大麻の自由診療を提供する日系クリニックです。
誰でも気軽に大麻を購入できる従来のディスペンサリーとは異なり、医師による医学的な評価のうえで、症状や体質に応じた品種・分量を個別に処方する点が最大の特徴です。
診察を担当するのは、タイで初めて医療大麻を正式な教育課程に導入したランシット大学の医療チームと提携する医師たち。このようなエビデンスベースの処方を行う施設は、タイ国内でもまだ珍しい存在です。
今回は同クリニックを取材。「どんな人が対象になるのか?」「診療の流れや料金」「効果や副作用は本当にあるのか?」など、多くの日本人が感じている疑問を医師に伺いました。

タイ伝統医学医師・チャペンワリ先生(タイ公衆衛生省認定・伝統医療大麻訓練修了)
患者の傾向と処方の方針|不眠からがん緩和まで幅広く対応
Greeus® Medical Cannabis Clinicには、どのような患者が訪れているのでしょうか。すでに日本人の来院も複数あり、症状は多岐にわたるといいます。
「大きく分けて3つのケースがあります。不眠やストレスといった軽度のメンタル症状、関節炎や偏頭痛などの慢性痛、そしてがん治療に伴う痛みや食欲不振など、緩和ケアを目的とした方です」

不眠や偏頭痛、月経痛から、てんかんやパーキンソン病まで——幅広い症状に対する診療が行われています。
——日本人の患者さんには、どのような傾向がありますか?
「不眠やストレスのご相談が多いですね。自律神経の乱れや睡眠の質の悩みを抱え、日本でなかなか解決できなかった問題に対して、新しい選択肢として医療大麻を求めて来院される方が目立ちます」
診察では、まず医師による問診とカウンセリングを実施。症状や体質、既往歴などをふまえた上で、必要に応じて診断書と処方箋が発行されます。短時間での診断書発行のみも可能ですが、じっくりと話を聞きながら丁寧に診療を進めるケースも多く、患者の希望に応じた柔軟な対応が特徴です。
——実際の処方は、どのような流れになりますか?
「症状にもよりますが、軽度の方にはまずCBD単体のオイルから始め、効果を見ながら必要に応じてTHCを含む製品を段階的に追加していくのが、Greeus®の基本的な処方方針です。CBDだけで十分な効果を感じる方も多く、患者一人ひとりの状態に応じて処方内容を調整しています。」

実際に処方される医療用大麻オイル

医師による問診と触診の様子。症状や生活スタイルに応じて、丁寧な診療が行われる
実際に処方される医療用大麻オイルは、症状に応じてCBDとTHCの割合が異なる5種類が用意されています。たとえば、CBDとTHCが等量の「1:1」や、CBDが多めの「2:1」「4:2」などがあり、症状の軽重や個人の反応に応じて調整されます。一方で、THCが高濃度の「1:4」タイプは、主に強い痛みへの対処を目的として処方されています。
「市販の大麻製品は、THC濃度や品質が不明な場合も多く、自己判断での使用にはリスクを伴います。Greeus®では、私たち医師が症状に応じて適切な濃度と用量を処方し、安全性と効果の両立を重視しています。副作用は少なく、使用中止による反動も基本的に見られません。」
こうした医師による処方と品質管理の体制も、従来のディスペンサリーとの違いと言えるでしょう。
ステージ4肺がん患者の来院例
日本から来院したステージ4の肺がん患者は、2021年に発症し、2年間にわたり抗がん剤を服用してきました。しかし、副作用が強く2024年7月に治療を中止。国内での治療方針に限界を感じ、知人の紹介でこのクリニックを訪れました。
医療大麻の使用は初めてで、「最後の選択肢」としての来院だったそうです。病歴を丁寧に確認した上で、CBDとTHCオイルを処方し、マッサージも併用。現在は心身ともに改善が見られ、タイ移住も検討されているとのことです。
未成年と高齢者への診断・処方について
Greeus®では、医療用大麻の処方対象を20歳以上に限定しています。未成年への処方は行っていません。
また、60歳以上の高齢者には、持病や服用中の薬の有無などを慎重に確認した上で診察・処方を行っています。
安全な使用を第一に考えた体制が整えられており、年齢や健康状態に応じた対応が徹底されています。
診察の流れと基本料金について
Greeus® Medical Cannabis Clinicでの診察に必要な持ち物は、パスポートのみです。予約なしでも受診可能ですが、混雑する日が多いため、事前にLINEでの予約を推奨しています。

Greeus®クリニックの受付。初診でも安心できる落ち着いた空間。
当日は、受付でパスポートと問診票を提出後、準備が整い次第、医師との面談へと進みます。医師が症状やこれまでの治療歴を丁寧にヒアリングし、必要に応じて診断書および医療大麻の処方箋を発行します。
診察はタイ人医師が担当するため、タイ語が不可の場合はGoogle翻訳を通じた対話が基本となります。簡単なやり取りには問題ありませんが、症状の詳細な説明に不安がある方は、事前にLINEからの相談を推奨します。
診察から処方までの所要時間はおおよそ1時間〜1時間半ほど。診断書のみの発行であれば、最短15分程度で完了します。
診察・処方料金
なお、料金は自由診療(保険適用外)です。問診が550バーツ、診断書兼処方箋が430バーツで、合計980バーツが基本料金となります(治療を受けた方は診断書費用が無料になります)。
【持ち帰り不可】日本人旅行者が注意すべき点
Greeus®で処方されるCBD/THCオイルは、日本への持ち帰りが法律上認められていません。日本ではTHCが規制物質に該当するため、医師の処方があっても違法となる可能性があります。また、CBD単体であっても製造過程の違いにより、日本への持ち込みはできません。
「CBDなら大丈夫」と誤解しやすいため、旅行者は特に注意が必要です。
そのため、多くの方は滞在中に使用を終えるか、帰国時に処分する対応をとっています。
なお、帰国後も国内で入手可能な合法CBD製品への切り替えや、経過のフォローアップについて、LINEを通じたサポートが可能です。不安な点は相談してみるとよいでしょう。
タイにおける医療用大麻のこれから
せっかく医師とのお話の機会があったため、筆者自身の疑問――「タイの医療大麻の研究レベルは世界的にどう評価されているのか?」という問いを投げかけてみました。
「現時点では、カナダやヨーロッパ諸国に比べて臨床研究やエビデンスがまだ不足しており、制度面でも発展途上と言えます。
ただし、合法化以降、大学や医療機関を中心に研究と教育への取り組みが活発になりつつあり、今後の成長には十分な可能性があります。
大手病院における専門科の設置はまだ少数にとどまりますが、著名な医師が研究を進めているケースもあり、医療現場での関心は確実に高まっています。」
Greeus®としても、今後は患者データの蓄積を通じて、社会的に有用な医療大麻のエビデンス発信に貢献していく方針とのことです。
また、精神的な課題を抱える日本人旅行者や長期滞在者に向けたメッセージもいただきました。
「もし日本で解決できない悩みがあるなら、一度こちらで診察を受けてみるのも一つの方法です。実際に精神的に安定を得られる方も多いです。」
精神疾患や慢性的な不調に悩む方にとって、医療大麻は新たな選択肢となり得る――そんな実感を得られる対話でした。
クリニックの基本情報・場所・SNS
- 診療時間:14:00〜20:00
- 定休日:日曜・木曜
- SNS(日本語対応):X(旧Twitter)/Instagram/LINE/SNSリンクのまとめ
予約・オンライン診断・診断書の発行など、基本的なお問い合わせはLINEからがおすすめです。
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