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2015年12月4日、タイ国家警察は、過激派組織イスラム国(IS)と繋がりのあるシリア人10人が、同年10月よりタイに入国していることを明かしました。
入国した10人は、タイにあるロシアの関係施設を報復の為攻撃する可能性があるとのことです。
10人はバンコクをはじめ、パタヤ、プーケットなどの人気観光地各地に潜伏している可能性が高く、タイ政府は警戒を強めるよう警告しています。
上記のニュースにより、ますます「テロ=イスラム国(IS)」というイメージが定着してしまいました。
ただ、タイにおいてのテロと言えば、2015年8月17日にバンコクで発生したテロ事件以前までは、殆どがイスラム国とは異なるイスラム組織によって、タイ深南部で起こっていました。
(度々テロが起こっていたタイ深南部、マレーシア付近のパッターニー、ヤラー、ナラーティワートの三県。)
今回の衝撃的なニュースにより、イスラム国とタイ深南部のイスラム組織を混合してしまった方もいると思います。
そこで今回は、今後のタイにおけるテロ関係のニュースをわかりやすく理解する為にも、タイ深南部のテロ事情をまとめてみたいと思います。
タイ深南部におけるテロの背景
タイ深南部のテロの背景は、簡単にまとめると
- 元々、現在のタイ深南部に存在した「パタニ王国」が分断され
- 強引にタイ化政策が勧められた
ことによります。
パタニ王国の分断
元々、上地図の三県を含むタイの深南部とマレーシア北部には、パタニ王国というマレー系イスラム王朝の国が存在していました。
(当時のパタニ王国の範囲。)
パタニ王国はマレー半島における貿易の中心地として、14世紀より繁栄した国です。
マレー語を母語とするイスラム王国であった為、国民はマレーシアに近い文化・アイデンティティを持っていました。
しかし、当時のパタニ王国よりも大きな力を持っていたタイとマレーシア(当時はイギリスの植民地だった)の条約により、現在のタイ・マレーシア国境が敷かれ、パタニ王国は南北に分断されました。
これによって北はタイ領土、南はマレーシア領土の一部となりました。1909年のことです。
タイ化政策
その後、タイの一部となったパタニ王国では、タイ政府によるタイ化政策が進められました。
具体的には
- タイ語使用の強制
- タイ人と同じ服装の着用
- タイ人らしい名前への変更
などです。
また、タイの一部とはなったものの、イスラム教徒である元パタニ王国民が仏教国であるタイで公務員になることは認められませんでした。
こうして、強制的且つイスラム意識への配慮に欠ける政策により、元パタニ王国民から大反発が起こりました。
タイ政府による対策→再びテロによる暴動
元パタニ王国民の反発は次第に激化し、遂には分離独立を求めて運動を行う武装組織が生まれるまでになりました。
治安の悪化をたどる深南部に頭を抱えたタイ政府は、分離独立運動を下火にする為にいくつかの政策を掲げました。
元パタニ王国民の公務員採用や深南部のインフラ整備、また、武装組織メンバーでも自主すれば罪には問わないというものです。
タイ政府の柔軟な対応により独立運動は落ち着きましたが、2004年をさかいに再びテロによる独立運動が盛んになりました。
タクシン政権の樹立
(タクシン元首相の画像を片手に「地獄に落ちろ」のポーズでタクシン政権を批判する人)
2001年より政権に就いたタクシン元首相は、タイ深南部にて元パタニ王国民をイスラム教徒という理由のみで、アルカイダ等イスラム過激派との関連付けを行いました。
これは、2001年9月11日に同時多発テロの被害を負ったアメリカの関心を買う為ではないかと思われます。
また、続く2004年、拘束された独立運動参加者78人がトラックで移送中に窒息死したなど、タイ政府によるイスラム教徒の配慮に欠ける政策が行われたことによって、再び分離独立を掲げたテロ活動が盛んになりました。
結果、タイ深南部は、これまでに5600人以上の犠牲者が出た紛争地域と化してしまったのです。
タイ深南部のテロ・治安
実際に、深南部のヤラー市では、2015年に入ってからも大学のキャンパス、駅、銀行を含めた30箇所で突如爆発が起こったという大規模なテロ活動が発生しました。
これによって30人以上が負傷、被害においても大規模といえる事件でした。
また、パタニー市内でも突如爆発がおこりISUZUのショーウィンドウが割れたという事件もおこりました。
タイ治安部隊がテロ容疑者と思い込んで射殺した男性4人が、実はテロとは全く無関係だったという失態も起こっているような状況です。
一時期のアフガニスタンのような状況が今も続いています。
2016年8月11日〜12日にかけて南部7県でテロ事件が発生
2016年8月11日〜12日にかけてタイ南部の7県(トラン県、プーケット県、プラチュアップキリカン県(ホアヒン)、スラタニ県、パンガー県、ナコンシタマラート県、クラビ県)で爆破・放火によるテロ事件が発生しました。
この事件により4人が死亡、35人が重軽傷を負いました。
重軽傷を負った人の中には、オランダ人、イタリア人、オーストリア人、ドイツ人などの外国人も含まれています。
当初、タイ政府は爆発事件の犯人は政治的な目的を持つ者だという見方を示していました。これは、爆発が起こったほんの数日前、タイでは新憲法草案が承認されていたためです。
しかし、テロに使われた爆弾が新南部のテロ組織が使う爆弾と類似していたことから、これまで上記3県でしか活動が見られなかったテロ組織が、活動範囲を拡大したのではないかという見方が強まっています。
現在、警察はすでに容疑者を確保済み。取り調べを行っている状況です。
今回の事件で最も衝撃的だったのは、プーケット、クラビ、ホアヒンといった外国人が集まりやすい観光地がターゲットになったという点でしょう。
これまでテロが行われていた場所はローカル地域でしたが、今回の一件では今後の南部への観光を懸念する外国人が増えたはずです。
自分もプーケットへ行くのを断念したくらいです。
テロ組織の活動域がこのまま広がっていけば、今後は南部全体への観光が危なくなる恐れがあります。
コロナ禍の2020年もテロが行われた
さすがにコロナ禍は政府とテロ組織の間で停戦が実現していたものの、それでも2020年10月には再びテロが行われました。
タイ南部のマレーシアとの国境に近いいわゆる深南部で10月1日に道路上に仕掛けられた「即席爆破装置(IED)」によるとみられる爆弾テロが発生し、兵士1人が死亡、6人が負傷した。
同地域ではタイからの分離独立を求めるマレー語を話すイスラム教徒のテロ組織が長年活動し、タイ治安当局との戦闘を続けていた。
現在も治安は悪い
外務省の渡航情報では現在も、上記三県(パッターニー、ヤラー、ナラーティワート)とソンクラー県の一部に「レベル3(渡航中止勧告)」を出しています。
テロ被害に遭わない為にはタイ深南部への渡航は避けるべきでしょう。
しかし、いつかは深南部に平和が訪れて、美しいモスクなどを観光できるようになればとただ願うばかりです。
タイ深南部に関しては、衝撃的なニュースが度々入ってきてます。早く平穏な国になるよう祈るばかりです。
2016年に起こったバンコクでの連続爆発テロ事件。その後の事件経過のまとめ。
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